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トータルヒーリングスペースRUACH[ルーア]心のセラピストAZUのしあわせになるメッセージ

感情のマスター

劇作家、演出家、演劇人のつかこうへいさん、62歳で亡くなられました。 私がそれについて書くのはとても僭越な気もしましたが 気が変わったので書きます。 数日前に私、ベランダで次から次へと 歌を歌っていました。 レパートリーがアメージンググレイスになって そこから今度は芝居のセリフに移っていきました。 昔から、一人で芝居一本のセリフを全部一人でしゃべってしまって 聞いていた妹もその芝居を覚えてしまうという ばかばかしいヘキが私にはありましたが 久々にそのヘキが出てきて つかこうへいさんの「ストリッパー物語」の明美ちゃんの長台詞、 やってしまいました。 久々にやってみたら完璧に覚えていて しかも当時のように泣きながら言えました。 その時の明美ちゃんの気持ちをちゃんと再現できたように思います。 アメージンググレイスはその長台詞のBGMとしてというのが出会いです。 21歳と22歳の時、二度明美ちゃんを演じています。 この作品は根岸季衣さんが19歳で初演していて この役はつかさんと根岸さんの間で誕生しています。 当時玉川大演劇専攻の卒業生と在学生を中心に活動していた私の劇団では 座長のまるちゃんが卒論がつかこうへいというほど彼の生きざまに惚れ込んでの上演でした。 つかさんのやり方は口立てといって 役者を前に自分でその時感じたせりふを吐いて それを役者はその場で自分に憑依させて吐く、という感じです。 うちの劇団ではさすがに口立てはしませんでしたが エチュードと言われる即興や独自の面白いトレーニングをたくさんやりました。 稽古は厳しく、私は稽古場ではリーダーのようなことをしていて 演出助手や補佐をしていました。 私は演出家からさえ、稽古の鬼と呼ばれていました。 稽古だけじゃなくほんとに芝居の鬼だったと思います。 つかさんは本当に彼のやり方で 人間の奥底にある感情というものを ストレートに、えぐるように、引き出し そして本当に役のからだと役者のからだがひとつであるように 演じることができるように導く名手だったと思います。 うちの劇団が上演したこのストリッパー物語は 小さな小屋にかかわらず回をおうごとに観客がふくれあがり 千秋楽には倉庫や通路まで解禁にして全員お立ち見状態でも なおかつ入場をお断りするほどの人気でした。 当時は演劇専攻というところですばらしい訓練を受けた生きのいい役者がそろっていました。 演じるなかで最も大切なことは 人間の感情をどう扱うかというとがあると思います。 基本は、ちゃんと反応する、ということです。 これがちゃんとできる人はそれほどひどい演技はしないはずです。 いろんなキャラクターがいてそれぞれ反応は違っていたりしますが 人間の根源的な感情というのはちゃんと存在していて キャラクターというのは その正直な反応を隠すか、曲げるか、無視するかといったように 後から上塗りしたに過ぎません。 でもその底には本当はどんな心の動きがあるのかというのは ちゃんと感じていなくてはなりません。 芝居の主役というのは あまり隠したり曲げたり無視したりということをしないキャラクターが多いです。 素直な反応をする人が物語りの主役になります。 だからみんなが見ていて感情移入しやすいんですね。 すごくおおざっぱなたとえですが。 で、一番してはいけないことは その底にある心の動きに嘘をつくことです。 ちゃんと刺され、ちゃんと傷つき、ちゃんと倒れる。 ちゃんと驚きちゃんと慌てて、ちゃんとひねくれ、ちゃんと泣く。 ちゃんと悔い改め、ちゃんと目覚める。 こういった人間の営みを、劇場という安全な場所で 神さまの視線に見守られながら捧げてきたものが芝居です。 嘘があったときに、ちゃんと怒れるリーダーが この世には必要だと思います。 私たちの稽古場でも いつも本当に小さな嘘を見破ること、見張ること、見過ごさないことがとても大事でした。 小さな嘘がすべての歯車を狂わせていきます。 間違いにみんなが気づき、それが修正されていくとき 本当に同じ筋書きのドラマが見事に調和して説得力を持ち輝きます。 人間は感情をマスターしなければどんなスピリチュアルなこともマスターできません。 つかさんの芝居を体験すると 人間の感情ってどんなものでもすてきなものだと感じられるかもしれません。 たくさんの贈り物をありがとう。つかさん。 本当におつかれさまでした。


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