最近の私のブームは豊見城市探索です。 主人の患者さんにもお勧めいただいていた 旧海軍司令部壕公園に自転車で行ってきました。 周辺の小禄の町は今は新品のおうちの立ち並ぶ ほのぼのした、ほっとするような住宅街です。 私はこの辺りを通った時 なぜか懐かしくあったかく軽くなりました。 数日後この公園の資料館で この辺りは特に酷い激戦地だったことを知ります。 私の感覚はちょっとおかしいのかな、と思うのですが 沖縄でも南部のほうがうんと落ち着くし 激戦地跡などを歩くとなぜか懐かしく からだは軽くなります。 壕に入る時も入る前はかなり恐かったのですが ほとんど癒されて出てきました。 私と主人が入ろうとしていた時すれ違いに若者5~6人グループが げっそりして出てきていました。 そして一人がみんなに(多分)レイキをしてあげていました。 背中にシンボルを書いて浄化しているようでした。 入り口では警備員のおじいや売店のおかあさんが親切で 自転車の置き場のことに気を配ってくれ 出口から入っていいよと言ってくれました。 でないと帰りに自転車までぐるっと歩かなければならなくなるからです。 それからのどが渇いて思わずジュースを買ってしまったのですが飲みきれず 中に持って入って大丈夫かと尋ねると 「いいと思うよ、そんなの止める法律日本にないと思うよ!」と笑顔で答えてくれました。 それで、出口から入った私と主人はいきなりどういう順番で見たらいいのか迷います。 するとさっきの警備員さんが箒とチリトリを持って立っていました。 おじいは私たちに順路を説明しようとして、ええい、じゃあ、という感じで 「だー、わしが案内しようね」といきなりガイドさんに変身しました。 日本兵と動員された沖縄人がつるはしだけで掘った蟻の巣のようなトンネルの中です。 小さな部屋が掘られていて、司令室、だとか下士官の部屋がありますが 下士官の部屋では満員電車のようにみんな立って寝ていたとありました。 巣の小さな部屋には、手榴弾で自決した爆撃痕が無数に残っています。 おじいは他のお客さんをよそに、力を込めて語ってくれます。 最高司令官の大田少尉の言葉が残されていて 彼は沖縄県民を慮り、県民がいかに命がけで日本国家に忠誠を尽くし戦ったかを 軍に報告していました。 その電文が壁に貼ってあるのをおじいは声に出して全部読み上げてくれます。 おじいは語気を強めて言いました。 海軍は海の男だから、心があった。 それに比べて陸軍は、悪いことばっかりしよった。 県民は日本兵にたくさん殺されてる。 妊婦のお腹を裂いて殺した。人間じゃないと思ったよ。 戦争はほんとに、だー、悪いよ。 あぁ、そうなのか。 海軍さんは県民に愛されているんだ。 陸軍さんはやっぱり憎まれてるんだな。 そうなのです。 私のおじいちゃんはその陸軍に所属していて この南部のどこかで、多分糸満市のここから数キロ以内のどこかで 亡くなりました。 遺骨もないので、多分その骨はこの島の土となっているはずです。 私はおじいちゃんがどんな気持ちでどんな風に最期を遂げたのか想像もつきません。 映画などを見てあれこれ想像するけれど、真実はわからない。 おじいちゃんは、おばあちゃんや母に言わせると 相当かっこいい、やり手の演劇人でした。 森重久弥さんや芦田伸介さんの所属した、新京放送劇団という劇団を主宰していました。 初めて書きますが、おばあちゃんが言うには「李香蘭とできとった」そうです。 これは私がおばあちゃんの口から聞きました。 おばあちゃんが亡くなる前にちょっと憎たらしそうにそう私に言いました。 才能があって美貌で芸事キチなおじいちゃんだったと思います。 33歳までにすごくたくさんのことをして、著書もあるそうです。 戦争で手元には無くなってしまいましたが。 そんなおじいちゃんが自分の置かれた運命の中で それをどんな風に受け止め(或いは受け止めきれずに) どんな風に生きて死んだのか、知る由もありません。 けれども、私はその警備員のおじいの燃えるような目を見ながら思いました。 もしも、おじいちゃんが追い詰められて、人間とは思えない酷いことを誰かにしたとしても 私はそれを赦せるし、大丈夫だ。 それは、人間誰もがしてしまう可能性のあることなのだと思う。 あいつはあんなことをして、酷い、許せない、という人がいたとしても それも人間の一部で、みんなの中の一部なのだと思う。 帝国軍人さんの中にも、手厚く葬られ毎年慰霊の儀式がなされ 毎日お茶とお花を手向けられる人もいるし どこでどうなってしまったかさえわからずどこかで土の肥やしになっている人もいる。 でも、そんなのはみんな同じだ。 たまたまその役を演じただけの 大きなひとつの霊の家族であり 魂の仲間だ。 この世で人間がしなければならないのは その真実を生きることだけだ。 そのためにしなければならないことはまだたくさんあると思うけれど。